杉浦 孝王(大阪あべの辻調理技術研究所)
これは、インタ-ナショナルVIPクラブ<大阪>の1999年9月の定例会でスピ-チしたものに修正、加筆したものです。
大阪あべの辻調理技術研究所 日本料理教授
愛妻を料理の鉄人にする秘訣
1. 皆さん、こんばんは。只今、ご紹介を頂きました杉浦孝王と申します。よろしくお願い致します。私は、阿倍野にあります辻調理技術研究所というところで、若い生徒達に日本料理を教えることを仕事としています。勤めて24年ほどになります。修業年限は1年間の学校ですが、料理の基本から応用まで幅広く行ない、彼らが一日も早く実践で戦力になるようにとの思いをもって、毎日ビシビシ指導しています。
今日は、こんなものを持参しました。これは、「桂むき」といいまして10cmほどの長さの大根を薄く長く剥いたものです。これを、基本的な実習として生徒に徹底的に練習をさせます。これは、一般に細く刻んで大根のケンとして刺し身の添えに使いますが、目的はそれだけでなく、この「桂むき」をしっかりと身につけておくと包丁の上達が早いんですね。指先の感覚を養うのに最良の方法なんです。この様な練習をして、いよいよ口に入るものを作るわけです。料理の学校でも最初から凝ったものばかりを作って食べているわけではありません。時々、勘違いをして入学をする人がいますから困ったものです。
2. さて、前置きが長くなりましたが、本日のテーマに基づいてお話をします。テーマは「愛妻を料理の鉄人にする秘訣」ということです。「料理の鉄人」とは大変、大袈裟ですが、果たしてそんな方法があるのでしょうか?少なくとも私の女房は、料理の鉄人どころか全くの凡人ですので、本来私に語る資格があるのか疑問なんですが、20年余りの経験の中で自分自身が学んだ「料理上手になるための秘訣」についてお話をしたいと思います。今回は、奥さんを料理上手にするための秘訣ですね。いくつかのポイントがありますが、3つに絞ってお話をします。
3. まず一つ目は、御主人が御自分の好みの味の店に奥さんを連れて行き、その味を覚えてもらうということがあります。とにかく「これが、旨いんだ!」という味を奥さんに知ってもらわなければ話しになりません。食べたことのないものを作れといってもこれは到底無理な話しです。料理のプロでも無理です。そのおいしい味を知れば料理を作る時に「この位の味だったかな。ちょっと薄いかな。濃いかな。」とかいろいろ考えながら味付けをします。これが、大事なんですね。まず、味の基準を知ってもらうこと、これが先決です。女性の方はそう思われませんか。
ついでといっては何ですが、女性の方が沢山いらっしゃいっますので味付けをする際に気を付けることを少しだけお話をしましょう。それは、「料理は数字で作らない。」ということです。どういうことかといいますと、料理の本などを見て、出し汁が何カップに対して砂糖が大匙何杯、醤油が何cc、と全く料理の本の分量通りに作らないということです。参考にする程度なら結構ですが、本の分量を絶対と思って作らないで頂きたいのです。料理は、家畜の配合飼料とは違いますから、何杯の何杯で合わせれば良いというものではありません。食べ手のことを思って味付けすることが何より大事です。甘い目の味が好みの方もいますし、辛い目の味が好みの方もいます。薄い味を好む方もいますし、しっかりとした味を好む方もいます。味の好みは人によって様々ですからそれに応じるということが大切ですね。
4. 二つ目に、ある程度の料理道具をそろえてあげて下さい。まず、やっぱり包丁が肝心です。最近はテレビの通信販売でやたらと包丁を宣伝していますが、そんな5本も10本も必要ありません。3本あれば充分です。野菜を切る菜切り包丁、細長い刺し身包丁、刺し身包丁といっても刺し身を引くだけが本来の使い方ではありません。肉や魚をちょっと切る時も非常に便利です。それから、魚を卸したりするときの出刃包丁ですね。骨を叩く時にも使います。皆さんの台所には何本包丁がありますか?「万能包丁」と言いますが、1本ですべてをこなすというのは、やはり無理があります。
そして、次に大事なことは、良く切れる包丁で料理を作るということです。蒲鉾の板まで切れますといってこの間テレビで宣伝していましたが、そこまでの切れ味は必要ありませんよ。何故、切れ味を求めるかといいますと、疲れないからなんです。切れない包丁は、その分力が必要ですから疲れてしまいます。それに、切れない包丁で指を切った場合は、その傷も深く治りにくいんです。包丁の切れ味は、料理の味も左右しますから、日頃良く研いでお使い下さい。そこで、お願いしたいのは、御主人が包丁を研いであげて下さい。そうしたならば、奥さんは更に張り切って料理をされるでしょう。私が保証します。包丁以外では、例えばおろし金にもこだわって下さい。良く切れるおろし金で大根をおろすと疲れませんし、舌触りが滑らかで本当においしいです。おろし金も刃物という感覚を持って下さい。鍋でもそうです。薄手の鍋では、まともに煮炊き出来ません。そこそこ厚みのある鍋を使って下さい。じっくりと煮炊きできますし、当然味にも違いがでます。結局、良い道具というのは長持ちをしますから、返って得なんです。落し蓋もお皿で代用するのではなく、木製の落し蓋を使って下さい。料理を作るのが楽しくなりますよ。
5. 三つ目に、奥さんの料理を誉めてあげてください。「旨い!」の一言で奥さんは疲れが一遍に吹き飛びます。料理を作るというのは結構大変な作業なんですね。それが、毎日のことですから本当に大変だと思います。献立を考えるだけでも苦痛になりますよ。それで、文句ばかりいわれていたのでは、割りが合いません。腹も立つと思います。私は、大変さを理解しているだけに、女房にはほとんど何も言いません。出されたものを素直に食べます。
結局、大切なのは、奥さんに料理に対してまず興味を持ってもらうことです。興味がわけば、どんどん腕はあがります。これでもしあがらなければ辻調理師学校に入学するしかないでしょう。絶対、間違い無しに料理が上手になることを保証します。でも、少しお金がかかりますよ。
6. さて、いろいろお話をしてきましたが、最後に皆さん、ここで少し考えて頂きたいのです。一皿の料理でも必ず、その料理を作った人が存在します。誰かが、材料を調達しておいしく食べてもらおうと作ったから、料理という形で存在するわけです。じゃが芋と人参と玉葱と牛肉をテーブルに置いておいたら、自然に肉じゃがという料理が出来たなんて誰も考えません。
であるならば、この自然界を良くみて下さい。花一つみてもそこに作り手の存在を確認できないでしょうか?あのような色彩や形を持ったものが全く偶然にできたと信じられるでしょうか?人間の体なんて余りにも精巧に出来過ぎていると思われないでしょうか?目でも鼻でも耳でもその機能たるや本当にすばらしいものです。脳にいたるや、未だ解明できない部分が沢山あると本で読みました。驚嘆するばかりです。偶然に何の意志も無しに出来たとは到底信じられません。そこに創造者、神の存在を認めないわけにはいきません。
聖書には、
「神の見えない本姓、すなわち神の永遠の力と神性は、世界の創造された時からこのかた、 被造物によって知られ、はっきりと認められるのであって彼らに弁解の余地はないのです。」
(ロマ1:20)
とあります。
神様を受け入れると、どうも大きな責任を負わされて自由がなくなると思っている方がいらっしゃるかも知れません。しかし、これは全くの誤解です。本当の自由は神様を受け入れるところから与えられます。この聖書の神様を信じてない方は、一日も早く信じられることをお勧めして終わりたいと思います。有り難うございました。